安間孝明
NPO法人トータルケアセンター代表
トータルケアセンターは、与えられたものを大切にしようとすることから始まりました。命も時間も出会いも与えられたもの、その一つ一つを大切にしようとする試みが実を結び、今のグレースグループとなりました。
ある友人から知的ハンディを持つAさんのことで相談がありました。「携帯を月に7万も使い、知らない男性について行くし、親とアパートで暮らしているんだけど激しいケンカをしてアパートを追い出されることを繰り返していて家族がまいっているんだけど、安間さんのとこで何とかならない?」とのことでした。すでに週4日ハンディを持った仲間3人と集まり、軽作業を始めていた私たちを頼ってのことでした。
私たちはそこをグレース工房と名付けました。スタッフは、すべてボランティアでした。Aさんのことを相談すると、病院勤務をしていたYさんが自分のアパートにAさんを迎えてくれました。常勤を非常勤に切り替え、多くの時間をAさんの人生の立て上げのために使ってくれました。月1回の仲間と開いていた「お菓子教室」も彼女が講師でした。
そこに来ていた仲間7人がグレース工房に来ることになり、週5日集まることになりました。自分の車を提供し毎日60キロの送迎を申し出てくれる人、午前中仕事を休み事務仕事をしてくれる人、昼食作りに来てくれる人、夜中のバイトをして18手伝ってくれる人、1年半ボランティア運営は続きました。男性の共同アパートもスタートしました。私の自宅の2階も仲間が住むことになりました。浜松市の認可事業として認められるまですべて持ち出しでした。
この時代を支えていたのは、「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい。」という型書のことばでした。私たちは正しい自尊心を持つことを学び、人を大切にすることを学んで来ました。この価値観に生きると決めた仲間がいたからこそ今のトータルケアセンターがあるのです。グレース、それは「神の恵み」という意味です。現代人は、与えられたものを大切にしていないのではないでしょうか。いとも簡単に命を捨てたり、奪ったり、互いに傷つけあっています。環境破壊もその一つでしょう。グレースグループは、「与えられたものを大切に」を合言葉に自然で安全な食を追及しながら、人を大切にする仲間の輪を広げていきたいと考えています。